第三夜 ヨネザアド物語
猫漫画の中で一等好きなのは、でぶ猫ヒデヨシが活躍するアタゴオル物語だ。とっても長いシリーズだし、アニメーションにもなったから、目にした事ある人も多いかもしれません。
今回紹介しますのは、そのアタゴオル以前に描かれた外伝的作品。70年代にガロで掲載されていた、というと、イメージわきますよね。もう、とってもハードボイルドでセンチメンタルでかっこいいのです!
アタゴオルで活躍する、ご存知ヒデヨシとテンプラ(ヒゲがはえたナイスミドル設定!)のシリアスな冒険譚もあれば、まるで美しい散文詩のような作品もあります。
中でもわたしが一等好きなのは、「再会」というお話。米沢市民文化会館で行われるロックンロウルコンテストに出るために、山からレロレロおりてきたヒデヨシくん(ベエス)。暗い田舎道を歩きながら、「いっちょ歌ってみっかは」と、のびのび歌うは、ビートルズのザ・ロング・アンド・ワインディングロード。そこで、東京から帰って来てたひろしにばったり出会って、ヒデヨシは彼もバンドに誘う。くすくすお喋りしながら二人が決めた曲は...
と、これだけ聞くとすごく何でも無いお話に思えるかもしれませんが、本を抱きしめたくなるほど素敵なのです。ボンクラたちがもち得るロマンチシズム。最後に二人で決める曲も最高!一生、こういう感じで生きていけたら、って初めて読んだとき思ったし、それから十年以上たった今でも思っている。
わたしが持っている朝日ソノラマ版は残念ながら、本当にちょう残念ながら品切れみたいですが、今はメディアファクトリーから文庫サイズで出ているみたい。でももし古本屋さんで朝日ソノラマ版見つけたら、絶対お家に連れて帰ってほしい!大きなページでみるこの時代の絵は本当に、額に入れて飾っておきたいくらいかっこいいので。
『ヨネザアド物語』 ますむらひろし著 メディアファクトリー